✤好きなことをやれば脳は力を発揮する

記憶力といっても、昔覚えたこと、学習したことは忘れないものです。経験によって得た知的能力、言語能力や漢字などは年をとっても良く保存されます。しかし、

新しいものを作り出す能力は年をとると落ちてていき、一般には40才くらいから落ちます。言語能力は60代くらいまでは保たれるが70〜80才から少しずつ落ちます。

経験知(経験によって得られた知的能力)と創造的な知能とは、明らかに違うものです。経験知が蓄えられるのは大脳皮質のいろいろの部分です。新しいものを作り出す

能力は、ワーキングメモリの働きです。それはこれまで保存された知識を、状況に応じて組み合わせる回路を作るわけです。この能力は前頭前野の働きです。

年をとるとこれらをうまく選択してつなげることが出来なくなり適切な反応ができなくなるのです。人間の脳を人間らしくするのはこの部分であるということで注目されている。

脳は機能が分担されている面があるが、何かをしている時には脳全体が関係し、ですから脳のつながりを良くする、シナプスのつながりを良くするには脳全体ということです。

脳細胞を健康に保つことが大事だということになり、つまりは、最大酸素摂取量を維持し、血流を良くすることといったことが前提になるわけです。

✱仕事によって力を発揮できるピークは違う。どのような分野の仕事でも、多少の経験、積み重ねが必要です。それに新たな発想が加わって、創造的な仕事ができるのです。

例えば、数学者などが新たな発見が出来るのは20代くらいまでといわれています。物理学など科学の分野でも30代が最盛期でせいぜい40代半ばまでです。これに対して、

画家や陶芸家など手先を使う芸術家は高齢になっても力を発揮できるようです。作家も高齢で活躍している人たちは多くいるが作曲家は若い時に創作の頂点に達するようです。

このように分野によって長く能力を発揮されるものもあり、短い期間しか能力が発揮されないものもある。科学的な発明、発見のような発想力、想像力が必要なものは、

やはり30代あたりまでが頂点で、法律家や医者などは過去の判例や積み重ねが必要なものはかなり高齢まで能力が発揮されるようです。ではビジセスの分野では?

必要なのは経験知と発想力の総合力といえそうです。経験知は年齢とともに積み重ねることができるが、発想力はだんだんと貧しくなっていきます。一般的にはこの2つが

最も発揮できるのは30代半ばから40代半ばの年代でしょう。発想力を衰えさせないためには好奇心を旺盛にして、体力を衰えないようにしてと気力を保つことです。

60代半ばを過ぎると、頭を柔軟にする必要があります。若い人の話も聞き頑固にならないように、能力の出し惜しみはいけません。脳は負担を与えることで、その力を

どんどん発揮するようになるものです。脳は難しいことをやると、それだけ脳のいろいろな部分が働くのです。それが身に着くと次に容易にできるようになるのです。ところが

怠けていると、脳はどんどん働かなくなってしまい、最も能力が発揮できる年代の30代、40代で精一杯脳を使っておかないと、50代になったら、脳はさらに働かなくなります。

力の出し惜しみをしていたら、どんどん脳の働きは低下していくわけです。自分はまだ余力があると思っていても発揮しないままであればその余力は失われていきます。

ですから、いくつになっても好奇心を持っていろいろなことに取り組んだり学習したりすることは効果があるのです。それには知的能力だけでなく体力や気力も必要です。

脳の衰えをカバーするには昔覚えたこと、経験してきたことだけでは駄目で、新たなことに挑戦して、新しいことを覚えていくことが必要です。それには意欲です。

もう年だからといろいろなことへの興味を失っていくのが、最もまずいのです。それはボケにつながります。やりたいことをやればやる気も起こるし、能力もフルに発揮

しやすいのは確かです。ですから、やりたいと思っていることと仕事が合致していれば一番能力が発揮しやすいということになるが、自分が本当にやりたいこと、それが

自分に向いているかどうかというのは意外にわからないものです。若いうちはいろいろなことをやってみて、大きな方向は漠然としていて、ターゲットは絞り切れていない。

もちろん、能力、性格によって、ある程度向き不向きはあるが数学者や科学者、芸術家などのような特別な才能が必要なものは別として、意外に適応力はあるものです。

仕事の種類、仕方によって、脳のシナプスのつながり方も変わってくるものです。あまり自分のやりたいこと、向き不向きにこだわるのは問題です。とりあえず、何かを

やってみて、経験を積み重ねていく中で、つかみ取っていくものです。はじめから、自分が100%今の仕事にぴったりだと思っている人など、少ないと思います。

20代である程度の修業時代がないと、30代になって十分に力を発揮できないからです。経験を身につけて十分に能力が発揮できる年代を30代に定めて、実力をつける

ことです。40代にピークを持っていくようにして、あとは経験を積み重ねて、50代になったら新たな発想力ではなく、経験知を生かす方向にもっていけばよいのです。

自分の脳の働きはどの分野に向いているのか先天的、遺伝的なものがあるのかどうか?これの研究はない。今の段階では向き不向きは結果論であって、いろいろのことを

経験して、「計算が速いから、数学に向いている」などうまく出来るから、自分に向いているということになります。

能力開発研究というのは難しく、ネズミなどで人工的に頭が良くなるように遺伝子を改変する事は可能になっているが人間では認知症などの病気の治療の貢献が目的です。

人工的に脳を良く働かせるようにするのではなく、体をいい状態にして、脳は使えば使うほどよく働くようになるのですから、自分の力でいくらでも働くようにすることができるのです。

そのためには、自分が興味があること、好きなことをすることが第一です。好きなことをしていれば、頭が良く働いているのは実感できるがその時の脳の状態は?の研究はない。

好きなことといっても人それぞれですし、脳の状態を詳しく調べるにはfMRIなどを用いるが実際には難しい。意欲に関係するのは、脳内物質のドーパミンです。好きなことをしている

時にはドーパミンがよく出ているのかといえばこれもハッキリわかりません。動物実験ではドーパミンを出ないようにするとそれまでしていた行動をやめてしまいます。ですから

人間でもドーパミンが出ているだろうとという推測です。ドーパミンは好奇心だけでなく、生きる意欲にも関係しているようです。パーキンソン病は、脳の大脳基底核というところにある

黒質という部分のドーパミンが不足していたり、ドーパミン神経も減っているため運動や意欲の低下がみられる病気です。こうしたことから意欲や好奇心と関係していると考えられる。

ドーパミンがどの程度の量出てれば、みんなが面白く感じるかといった基準もなく、人によって興味を感じる物も違えば、面白い、楽しいことをやっている時の出る量も違うのです。

何でも好奇心を抱くような人はわずかのドーパミンでその効果も高く、何にも関心を抱かない無気力な人はよほどドーパミンが出ないと、快感を感じないとも考えられる。

これは遺伝で決まっているようです。感受性の弱いドーパミン受容体を持っている人は、多量のドーパミンが出ないと好奇心を駆り立てられないようです。逆にいえば

ちょっとしたことでも楽しめる人は、ドーパミン伝達の効率がよく、ドーパミンが少なくても受容体の感受性が良いので効果があるというわけです。

ある種のドーパミン受容体を持つ人々は面白いことであれば、危険も顧みずやってしまうのです。スリルや冒険を好む人たちです。米国に多いが日本には少ない。

ドーパミンは快楽ホルモンとも言われ、脳内にドーパミンが出て、その効果が高ければ快楽を感じるわけです。うつ病の場合も脳内ドーパミン量が減っています。多少少なく

なっていても別にうつ病になるわけではなく、逆にドーパミンが出過ぎて、その快楽に引きずられて暴走しても困るのです。少しでも受容体が敏感で効果が高くなりすぎても

弊害が出ます。アルコール依存症、ギャンブル、タバコ、覚せい剤などもドーパミン効果を必要以上に高めてしまい、1度快感を覚えると、その行動が止められなくなるのです。

自分にとっていいこと、プラスになること、脳にとっていいこと、すなわち、勉強や仕事で能率が上がりドーパミン効果が高くなればいいわけです。ドーパミン神経は期待値と

報酬量との差が大きいほど興奮するようです。そしてその興奮が強いほどシナプスのつながりが良くなるのです。やっている時は多少つらくても将来の大きな報酬に向かう行動で、

ドーパミン効果が上がるようであれば、その人はかなり有意義なことができるということになります。勉強でも仕事でも、興味を持って面白く出来るのなら、ドーパミンが働いています。

はじめは苦労が多くて大変だと思っていたことでも、やり続けているうちに、だんだん面白くなるものです。そして、それが思いもかけないような成果に結びついたり、人から評価を

受けたらそれが大きな報酬となるのです。その時ドーパミン神経は大きく興奮しているはずです。その回路が強化されれば、次にはシナプスがつながりやすくなり、そのことを

やるとドーパミンが出やすくなっているのです。そうなれば仕事や勉強をすることがどんどん面白くなって、一層意欲が出て、脳の活動も盛んになるのです。

つまり、私達が一生懸命仕事をするのは、職場で認められ、それが給料に跳ね返ってくるといって見返りがあるからです。報酬があることで、私達はやる気が出るのです。

いい方向に期待することでドーパミン神経が活性化して、実際に効果があれば、さらにそれが強化され、やる気も起こるということになるのです。

何でもやればやるほど、うまく能率的にできるようになります。それは脳のシナプスのつながりが良くなるからです。出来る人ほどシナプスの伝わりが速く、効率がよいので

回答を出すのが早いのです。神経回路のつながりに無駄がなく記憶の形成や引き出しが効率よく行われていて、こいう人の脳の血流は、1部の血流だけが反応しているのです。

いろいろな部分の血流が多い人は、神経回路がうろうろと回り道をしているのです。脳のあちこちの血流がいいほど、脳をそれだけ使っているのでいいように思われるかも

知れませんが、脳は疲れて長時間使えません。同じ作業をするなら、脳を省力化して使うのが効率的なのはお分かりでしょう。成績が良い子供は勉強にも慣れていて、

脳を効率的に使えるようになっているので長時間勉強しても疲れず、勉強の効果も高くなるのです。逆に勉強が不得意で、嫌いな子供は短時間で疲れてしまい、効果も低い。

何事でも慣れないうちは時間をかけて、脳に負担をかけるのは仕方がないことです。それを続けることによって、脳は近道を覚えていくのです。最短距離でシナプスをつなげる

ようになるのです。勉強嫌いでも、はじめのうちは効率が悪くても勉強を続けていき、脳に負担を与え続けるしかないのです。それを続けることで脳の耐久力も付いてくるのです。

IQの相関性は兄弟で60%、双子で85%と脳の働きに遺伝が大きく作用していることは確かです。遺伝だけで決まっているわけではなく、遺伝と環境はほぼ半分ずつのようです。

いくら素質的に働きがいい脳を持っていても、遊んでばかりいたら、頭も活性化しません。遺伝的な素質は低くても、脳をいつも働かせるような生活をすれば、能力は発揮できます。

40才以降は脳細胞は減るのはやむを得ないが、脳力を衰えないようにできるかどうかは、その人の生活次第で大きく変わります。いつまでも脳を最高の状態に維持したいものです。

そのためには、第1条件は体の健康維持です。脳のシナプスは繰り返し行うことでつながりやすくなります。つながり易くなって、遺伝子の働きが良くなることを遺伝子がオンになる

といい、逆に働かなくなることを遺伝子がオフになるといいます。遺伝子がオンになるということは、シナプスが増えるということです。シナプスが増えて他の神経細胞と縦横無尽に

つながり易くなると、それだけいろいろな部分も活動することになって、知的活動も活発にできるのです。年齢とともに多少働きにくくなり、オフになりかかった遺伝子も、シナプスを

強化してオンにすることができるのです。それには日常の学習しかありません。年をとって物覚えが悪くなったと思って、覚える努力をやめてしまったら余計に働かなくなってしまいます。

年齢とともに記憶力が悪くなるのは仕方がないことです、それならもっと覚える努力をすればいいのです。努力すれば繰り返す回数も減ってきます。シナプスのつながりが良くなる

からです。海馬では神経細胞が増えることもあるのです。脳は怠けると、どんどん怠けてしまいます。すると使わない遺伝子はオフになっていきます。血流がないので細胞が死んで

いきます。多少脳に苦労させてどんどん働かせることです。それによって脳はまた省力化するので、年齢に関係なく早くシナプスがつながるようになります。