奇跡の一滴が脳に効く

脳は六重に守られた器に収まっています。

一重目は皮膚・筋肉    二重目は頭蓋骨。これはプラスチックのヘルメットのように硬く丈夫で、強い衝撃から脳を守ります。

三重目は硬膜。この膜はビニール袋のように水分を漏らさないように緻密になっています。

四重目はクモ膜。和紙のようにクッションになっています。    五重目はクモ膜下腔を満たす脳脊髄液。衝撃があってもこれが吸収してくれます。

軟らかい脳は、六重目のタラコの膜のような軟膜にラップされて、この液に浮いています。軟膜には微細な血管が広がっています。

クモ膜と軟膜の間にはクモの巣のような突起がクモ膜から延びてつながっていて、その間には脳に入っていく血管がたくさん走っています。

この血管の一部が風船のように膨らんで破れると、クモ膜下出血ということになります。そして出血した血液が脳脊髄液に混ざって水圧が高まると、

脳を圧迫するので激しい頭痛や嘔吐が起きます。

表面にはシワがあり、やや軟らかい脳には、ところてん様の細長い繊維がたくさん混ざっていて、これが神経細胞(ニューロン)です。

神経機能の主役を担っています。脳にはこれが130億個あって10万個/日減っていると推計されています。急速にごっそり減ると認知症になります。

それ以外のバター様のものについては、これはグリア細胞(神経(きょう)細胞)であって、血管から栄養を受け取るとそれを選別し、その上で

神経細胞に必要な栄養を送り込んだり老廃物を回収したりと、神経細胞を補完する仕事をしています。

グリア細胞は脳全体で2兆個あると計算されています。脳腫瘍(癌)に罹るのは主にグリア細胞です。

✴人の脳は左右に分かれ、一対になっています。ほぼ同形の左右の脳は中央部で脳梁(のうりょう)によってつながれていて、ここには左右の脳が連絡し合うための神経細胞の束があります。

左脳は、言語を話す、言葉を理解する、文字を書く、理解する、読むといった言語機能に優れています。脳卒中で言葉がダメになったら左脳が障害されたと推定できます。

右脳は、形の判断、その人が誰であるかの認識など空間認識に優れています。脳卒中の後に、家族や知人が誰であるか分からなくなったら、右脳が障害されていることになります。

叉、左右の脳は言語や認識の機能ばかりでなく、運動・動作の機能にもなっていて、左脳は右半身の動き、右脳は左半身の動きをコントロールしていますから、もしも左半身の動きが

駄目になれば右脳が障害されていることを示しています。

✳今度は脳を縦に開いてみると、大きくは3層になっていて、各層は心の働き、理性・感情・本能に当たります。表面の大脳皮質は理性の働く場所です。その下が大脳辺緑系で感情の

働く場所。左右の大脳辺緑系は脳梁でつながっています。下からゴルフ・クラブのように納まっているのが脳幹で、本能や欲望の働く場所です。この3層とは別に大脳の後部下側に、

脳幹をくるむようにして小脳があり、ここはピアノを弾く、自転車に乗るといった身体の繰り返しの動作を記憶し、その動作をコントロールする場所です。飲み過ぎでフラフラするのは、小脳の

動作コントロール機能が消えかかっている証拠です。脳幹が大脳に食い込んだ先端部分には、視床、視床下部、下垂体があって、分泌されるホルモン次第でセックス欲、食欲、闘争欲、

怒り、幸福感、満腹感などがわき出てきます。だから、肥満/ダイエットにも関連しています。また、呼吸・血液循環・発汗・体温調節といった生きていく上で基礎となる生理機能を自動的に

コントロールしています。脳幹の神経細胞は、大脳ほどには減少せずボケ・認知症になっても食欲やセックスへの関心は維持されます。脳が障害され脳幹が正常なら植物状態で生きている。

脳はブドウ糖と酸素を大量に必要とし、次々とシナプスを作ってゆくには大量のアミノ酸や脂質も、そしてそれを合成したり分解する酵素のために、ミネラル類も必要です。

このため、必要なものを大量の血液で運び込まなければならず、心臓から4本の動脈が脳に入っています。問題は、血管が脳に入ってからの走行です。他の動物と違いとても変則的な

走行になっており血管が直角に曲がって伸びたり、逆行して伸びたり、次第に細くなってきたはずの血管が急に途中で太くなって枝分かれしたり・・・と、実に場当たり的な走行になっている。

血液の流れに逆らうような箇所がたくさんあるのです。こういった箇所に、血圧が強く加わりやすく、加えて血管が傷むような生活習慣を続けてゆくと、何十年後かにもろく破れやすくなるのです。

人間が脳卒中を起こしやすい理由がここにあると同時に、この点をよく承知して生活及び食生活の工夫を積み重ねてゆけば、脳卒中を予防することになります。

大脳の底部を走る基底核線条動脈は逆行する動脈で、ここから枝分かれした一番外側の血管は脳卒中動脈と呼ばれているほどです。太い動脈本管は肉厚で、弾力もあり、簡単に切れる

ものではありません。静脈の方は薄く、血液が流れていない時はペチャっとしていて、その程度の強度で役割を果たせるのです。

問題は動脈です。太く丈夫な動脈は、先に行くに従って細くなるとはいえ、やはり丈夫な作りになっているので、劣化したり塞がったり詰まったりしないように大切に養ってゆく必要があります。

そうすれば、脳は順調に機能し、その人は一生を人間らしく生きることができます。

大脳は「葉」と呼ばれる4つの領域に機能が分かれていて、額の部分は前頭葉、頭のてっぺんは頭頂葉、頭の両側の耳上部が側頭葉、頭の後部

は後頭葉といいます。 前頭葉では、責任感、野心、創造性といった人に特有の心の働きが生まれます。頭頂葉では触った時の感覚や痛みを感じたり、

筋肉の収縮をコントロールします。側頭葉では、聴覚による言語の理解、絵や形の認識、長期の記憶をします。後頭葉では、目にした映像が貯えられる。

④つの葉という領域は互いに重なる部分がたっぷりあって、そういう部分を連合野と呼んでいます。


脳は神経細胞がびっしり集まったところだが、本体の中心部には核があり、本体からは樹状突起がたくさん伸び、それぞれがいくつにも枝分かれ

しています。枝や細胞へ他の神経細胞から情報が入ってきます。(図表1)これとは別に、本体からは長い神経繊維=軸索突起が伸び、その先端

軸索終末から、枝分かれして他の神経細胞に情報を流します。この部分をシナプスと呼び、情報伝達物質の化学物質が終末から他の細胞に流れる。

1個の神経細胞は、数万個のシナプスを持ち、ほんの一瞬のうちに、大量の情報が入ったり出たりしているのです。130億個の各神経細胞が

数万個のシナプスを持っていて、合計数百兆個のシナプスを介して連絡を取り合っているのですから、スーパーコンピューターといえども脳の多彩な

情報処理能力には勝てません。人間が色々なことを関連ずけて考えたり理解したりできるのも、このシナプスのお陰です。